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日々、気が付いたこと感じたことを気ままに綴っています。
2019年から始まった働き方改革によって、労働基準法が施行されて約70年の中でかつてないほどの大改正が毎年のように行われてきました。
労働時間や休日休暇・副業の取り扱いや育児介護休暇など事業運営に直結する部分も多く、5年以上変更していない就業規則ではもはや対応できないと言っても過言ではありません。
就業規則の意外と知らない活用法をお伝えいたします。
コロナ渦で浮上した就業規則の不備
2020年1月に思いもよらぬ新型コロナによるパンデミックが始まり、いろいろな企業から労働相談がありました。
・業績が落ちて従業員を解雇・雇止めにしたい
・休業手当の金額が違うと従業員から言われた
・テレワーク導入したら深夜に仕事をする人がいて深夜割増が発生した
・在宅勤務にしたが交通費の扱いはどうしたらいいか
などなど。
コロナ渦以前とは違う就業環境になった会社が多くありました。そのため相談に来られるときに就業規則を持参するようお願いをするのですが、拝見すると多くの会社の就業規則は相談内容に関係する部分が曖昧な表現であったり、または記載がない会社もありました。
そうなると、多くは労働基準法に則り労働者に有利に判断することになります。
就業規則で定めておけば従業員に支払う額は定めている額だけで済み、また従業員からの不必要な要望もなかったかもしれないと思うことが多々ありました。
就業規則が改正に追いついていない、時代に沿わない就業規則のままであればリスクを回避できず、時には大きな出費や問題社員で社長の頭を悩ませることになるのです。
就業規則はルールだけじゃない会社の方針や理念も示すもの
よく就業規則は「会社のルールブック」と言われています。雇用主である会社と従業員間の雇用に関することをまとめたものです。本来は、従業員一人一人と労働条件を決め労働条件通知書や雇用契約書で個別に定めることができます。しかしそれだけでは人が集まる事業所ではカバーしきれません。職場環境の維持や安全上の注意事項が網羅されているものが必要になります。
労働基準法では就業規則の基本となる出退勤の時間や賃金の計算方法等を絶対的必要記載事項を決めています。
そのほかにもまた相対的必要記載事項(その制度を設ける場合にのみ記載が求められる事項)にある退職金や手当、安全衛生や表彰、制裁に関する事項により実は企業理念や方針、ビジョンなど全従業員へのメッセージが伝えやすくなります。
常時10人以上の労働者を使用する会社(雇用主)は、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません(労働基準法89条)。届出がされていない場合、労働基準法第89条違反となり、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。
労働問題が起きたときの就業規則
例えば、問題社員で遅刻や早退、無断欠勤が多い社員がいたときに労働者の処分に関するルールが就業規則に定められていなければ、会社は懲戒処分を行うことはできません。仮に、就業規則を作成せずに懲戒処分を行った場合には、裁判では会社側が不利になり『解雇無効』となる場合があります。
欠勤控除も法律では定められておらず、就業規則によりどの手当を含めるのか含めないのかを定めていないと、従業員との認識とのずれで信頼関係の崩壊に発展することもあります。
また、採用したばかりの従業員が育児介護休業を申し出たときも、定めていなければ拒めません。せっかく人員不足の解消のために採用したのにも関わらず、その人が休業という事態になりかねません。しかし就業規則で定め従業員と協定書を結ぶことで、勤務が1年以上の従業員と定めることが出来るようになるのです。
周知して初めて効力を発揮する就業規則
以前に「汚れたら困るから、鍵のついている書庫に入れて保管している」という会社がありましたが、それでは就業規則の効力は発揮できません。なぜなら従業員が何をしても良いか悪いか知らなければ守ることもできません。また周知をしていない場合は労働基準法第106条違反となり、こちらも罰則(30万円以下の罰金)の対象になります。
過去に周知をしていないために就業規則の効力を否定され、会社が裁判で負けた判例が多くあります。
では、どのような周知なら良いのでしょうか。具体的には、次の3つの方法が示されています。
l 事業場の見やすい場所に掲示、又は備え付ける。
l 書面で社員に交付する。
l パソコンやサーバーなどにデータとして保存し、いつでも見られるようにしておく。
つまり「社員が見たいと思った時に、見られるようにしておく」ことが求められます。誰でも自由にいつでも見れることが周知になります。
変化の激しい時代にマッチした就業規則ですか?
最近ではスマートフォンで気軽にSNSで会社の裏側が従業員により写真が投稿されるなど情報漏洩問題や、また副業の解禁により自由度が増す業界も増えています。さらにいじめやハラスメントを行う従業員を放置していれば、そのことにより鬱病になった従業員から安全配慮義務違反などで慰謝料を請求されることもあります。
幅広い年代と多種多様な生き方をする「人」が集まる職場では、ルールをしっかりと定めておく必要性が以前よりも高まっていると言えるでしょう。
時代に即した就業規則なのか、今一度ぜひ御社の就業規則を読みなおしてみてください。
もし法改正や時代に追いついていない就業規則であれば改訂することで、社内でおきる労働問題を未然に防ぐことができ、また万が一の裁判や情報漏洩、謝罪会見や慰謝料などのリスクから会社を守ることが出来ます。