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HPC 事務所コラム

日々、気が付いたこと感じたことを気ままに綴っています。

がんと仕事の両立支援

がんサバイバー(癌に罹患している方、治癒された方)や、まったく知らなかった方、また今後両立支援をしたいと考えている方、会社の人事総務担当の方。いろんな立場の方から病気と医療の両立支援がもたらす会社の利益をしって、制度を考えて頂けたらと思います。

 

日本のがん人口

現在、国もがんと仕事の両立を進めています。それは働き盛りの世代のがん罹患率が年々増えているから。健康診断が普及し早期発見にもつながっています。そのため40代~50代と働き盛り、また家庭では稼ぎ頭が癌になる(発見される)ケースが増えてきました。

 

日本のがん患者数は2022年国立がん研究センターの発表では

大腸がん  158200人

胃がん   132100人

前立腺がん 96400人(男性では1位)

乳がん   95000人(女性では1位)

となっています。

またAYA世(あや)世代という若年層のがん(15歳~39歳)も多く、約2万人が治療しています。

AYA世代では、大腸がん、乳がん、子宮頸がんが多いのが特徴です。

そして今多くの働く世代がなりやすい乳がんでいえば、なんと成人女性の9人に1人が罹患しているのです。
9人に一人って、驚きの数字じゃないですか?
かなり身近な病気になってきたと言えるでしょう。

でも周りにはいない、聞いたことがない、という方も多いです。

癌を告知されても誰にも言えず、そっと治療をしている人、また誰にも言わず退職する人も多いのが現実なんです。

しかし、そんな恐ろしい死に至るがんも今では治癒率も上がってきました。
それはやはり健康診断により自覚症状などが出る前に発見されるケースが増えたから。

会社の中心人物や管理職ががんになったら~
がん患者が退職したときの会社のリスク

治癒率が上がっている要因に会社等の健康診断が定着したから、と申し上げましたが、つまり逆を言えば世代的に管理職やベテラン、技術・知見も豊な人ががんになるケースが増えているという事です。

もし抜けては困る方ががんになったら?

以前であれば患者の年齢も高い方が多かったので がん=死 でした。また発見されるときには進行していた、という事も多かったです。未だにその印象が強く「仕事ができなくなる」と誤解をしている方も多いのが現状です。

しかし早くに発見し治療すれば元のように働ける人が増えているのです。なんと治癒率も部位によりますが5年生存率で

大腸がん 63.7%

胃    61.9%

前立腺がん82.7%

乳がん  88.2%

となっており、実測年齢は高齢者が多いのも鑑みると働く現役世代は、もっと治癒率が高いのではないかと推測できます。

つまり今や癌は死ぬ病気ではなく、治癒できる病気になりつつあるという事です。

それでは、癌になった社員が退職してしまうと会社にどんなことが待っているのでしょうか。

 

『当社は従業員数30名ぐらいの頃から、がんや脳出血、怪我をした人が普通に治療しながら働いていました。元々、資格を取って現場所長をやっているような経験豊富な方ががんに罹患することが多く、そうすると本人も働きたいし、周りも「あの人がいないと困る」となりますので、仕事と治療を両立するのは当たり前でした。』

中小企業の「仕事とがん治療の両立支援」は合理的な面から促進できる【ネクストリボン2020レポート】

このサイトでも伝えているように

① ベテランのスキルや技術の継承が途絶える
多くの責任を伴う仕事をしている人が癌になったことで退職してしまうと、会社にとっても大きな損失にもつながります。採用し、ベテランになるまで育成するのは大変な時間がかかります。また、スキルを継承するのも半端じゃない時間と労力がかかります。

 

② 人手不足になる
人手不足が常態化している中小企業にとっては、1人退職してもすぐに採用ができる訳ではありません。採用にかかる費用も、また人手不足から残業になれば、残業代もかさみます。その結果、残っている社員から会社への不満も出てくることも。

 

③ 他の社員への影響
また、癌になった同僚や先輩が会社から言われて辞めていく姿を見ていたら、社員自身が自分の将来に不安になります。「もし自分が癌になったら?退職しないといけないのか」と考えます。会社への信頼感、安心感はなくなり「使い捨てられる」という思いも出てきます。

癌は、治療しながら仕事ができる病気に

癌は早期発見、医学の進歩、検査手段が増えてきて、一時期に集中して検査や治療すれば、あとは定期健診など職場復帰も可能な病気になってきました。

癌の種類や部位によって違いがあるものの、ある程度の外科的治療や放射線、抗がん剤治療により告知から1年ほどの間が集中した治療となるケースが多いです。

その治療の最中は、激しい副作用に苦しんだり強いストレスでうつ状態になったりと、本人もどうしようもない苦しみと闘います。

部位や状態により違いはありますが

手術後1か月の自宅休養

放射線治療は週5日✖4~6週間

抗がん剤治療 週1日✖6週間~

というのが一般的な治療です。病院や医師によって治療方針も違いますし、癌の遺伝子や性格(と言われている細胞の活性度)でも違いはあります。

ただ、おおよそ告知から1年間が一番大変で体が動けない、吐き気、脱毛などで患者本人の心身ともに治療で消耗します。

しかし、この1年を過ぎると体調も戻ってきて徐々に仕事へ復帰できるようになります。

手術後などは身体的に不自由になったり制限もあるかもしれませんが、職種によっては通常業務に復帰できる方もいます。

退職を焦らせない、辞めさせない体制を作る

がんの告知を受け「退職」を自分から申し出る人が実は多いです。日本人の多くが「会社に迷惑をかけるかも」と思うと、退職した方が良いのだろうか、と考えてしまいます。

もともと休むことが罪悪と思いがちな人ほど、今後のことを考えて退職を考える傾向が強いですね。しかしその患者自身が癌を知らずにいることも多く、癌のショックで思考停止になっていて自暴自棄になることもあります。

もし申出があったら全力で引き留めましょう。

間違っても「退職して治療に専念したほうがいい」と言ってはいけません。
なぜならがん治療には、高額な医療費が必要になります。そして治療に専念って、いつまで?となります。必ず復帰させると約束ができるのでしょうか?
治療には10年かかります(一般的に治癒と言われる期間)10年も働かず治療をしているだけなんて普通に考えても無理です。

がん患者が治療にかかる費用は?というと、健康保険でも3割負担。
それでも1つの検査に数万円、抗がん剤1回に数万円×回数分、放射線治療でも同様です。そして手術になれば、数十万円です。
病院に行くたびに、数万円ずつ支払うことになります。

現役世代のがん治療には、保険内診療でもとてつもない医療費がかかります。

 

高額療養費制度でも、月に人によってですが約8万円の負担。それが4か月あれば多数回該当になりますが、それでも4万円以上の負担。合算対象も一回の診療21000円以上…高齢者と現役世代では全然負担が違うのです。

退職してしまえば収入がなくなり治療したくてもできない事も。

そして働けるようになった1年後に就職があるのでしょうか。40代50代で就職しようとしても、もはやありません。さらにがん治療をしながら、となれば採用側も躊躇するでしょう。

辞めるのはいつでもできるので、とにかく治療のスケジュールを医師と相談し決定するまでは保留にすることを勧めましょう。

会社の対応の仕方~スケジュールの見通し

さて、それでは治療のスケジュールはどんな流れになるのか、いつ決まるか気になりますよね。
それは従業員本人が一番知りたい。ですが、決まるのも実は結構時間がかかります。手術を先にするのか、抗がん剤治療や放射線治療からするのか。
手術にしても、最近ではカテーテルなどで1泊で出来てしまうもののあれば、2週間ほど入院するなど全然違います。

でもすべて検査が終わってから医師が判断するので、本人ですらわかりません。
こればかりは、本人に問い詰めても聞いていなければ分からないのです。
告知から6か月後に決まることもあれば、1か月後には決まっていることも。

ですので告知を受けた従業員さんから相談があったら

「治療のスケジュールが決まったら、すぐに教えてください。お休みしやすいように準備しないといけないですからね」

とだけ伝えましょう。恐らく決まったらすぐに相談してくれるでしょう。

スケジュールが決まって治療が行われるまでは、昨日となんら変わりがない仕事ができます。ただご本人のメンタルが一番落ちているときでもあります。

聞く必要がない問いかけは言わない

がんの症状などは、非常にデリケートな質問です。大概の患者は「がん」と口にするのも毎回自分にがん患者なんだと刷り込まれるようで嫌です。

 

初期なの?

ステージいくつ?

転移は?

よくなるんだよね?

・初期なの?
初期なの?と聞いてしまいたくなる気持ちも分かります。では、初期ってどこまでを初期というのか、初期じゃないと言えばどうなるのか、と不安になります。また、初期で発見できなかったことをすでに悔やんでいる人も多く、自分を責めているときに追い打ちをかけてしまいます。

・ステージいくつ?
どんな状態か知りたいから目安になると思って聞く方が多いと思います。しかしこれも実は必要がないこと。ステージがいくつであっても、実際には治療に差がない事が多いのです。ステージ1であっても10年間の治療はします。そしてステージと状態は必ずしも一致するわけではありません。だからといって詳しく聞いても、予備知識がない状態ではなおさら混乱してしまいます。

・転移は?
もっと聞かれたくないことかもしれません。転移があっても治療方針に変わりがないことも多く、ただただ重症に思われるんだろうなと従業員さんが重い気持ちになってしまいます。その気持ちを一緒に背負えるのでしょうか?背負えずに興味だけなら聞かない方が良いですね。

・よくなるんだよね?
好意で言ってくれる気持ちもわかるのですが、良くなりたいと願っていても必ずと言えない状況の中では答えようがないのです。何故なら、がんは他の病気と違い「運」の要素が大きいのです。当然ですが「死」とも隣り合わせ。発症した部位、転移、再発・・・医師ですら、本人ですらわからないのです。もちろん生きるために治療していくのですが「絶対」がないことを答えられないのです。

がんが他の病気と違って「怖い」のは、この運が左右するということだと思います。
普通の病気なら、良くも悪くも治療したらこうなるというのがある程度予想つきますが、運が悪ければ「死」というのが一番の不安材料なんだと思います。

 

会社としては、一番重要なのは

いつから休むのか

いつから復帰できるのか

どんな仕事ができないのか

ということです。ですので、本人が言いたくなったことに寄り添い、スケジュールと配慮事項さえ聞けばよいですよね。
また従業員同士も、憶測や興味本位での言葉がけがないようにしていくのも大切です。

会社の制度を整え、復帰を待つ

有給休暇

傷病手当金

高額療養費制度

休職制度

リワークプログラム

障害年金

 

就業規則にはいろんなルールがありますが、休職制度をしっかりと利用できるようになっているでしょうか?

案外自分が当事者になってからだと、就業規則を再確認する気持ちにはなれないことが多いです。できれば健康な時に就業規則をしっかりと確認することをお勧めします。

休職制度も現実的なものなのかも。制度としてはあっても実際の運用にそぐわないパターンもあります。

またずっと長く貢献してくれた従業員にもっと休職を与えたいと思っても他の従業員とのバランスなどで悩むことも。そういう時は有休休暇の時効で失った分などを特別にあたえるという制度を作ることも可能です。

いろんな社会保障と制度で、大切な従業員ががんで退職しないように、また復帰を待ってあげられるような会社が増えると嬉しいです。そしてそれは当事者だけではなく、その家族にとっても嬉しいです。

また、社員全体が安心して働ける会社になり良い影響に繋がるのは間違いありません。

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